映画感想 ”レミーのおいしいレストラン(原題:Ratatouille)”
就職活動を終えたころから映画を見始め
今月は一日一本ペースで映画を見ています。
『レミーのおいしいレストラン [DVD]』のレビュー ブラッド・バード (私の公開本棚さん) - ブクログ
既にブクログの方でレビューを書きましたが
ちゃんとした”レミーのおいしいレストラン(原題:Ratatouille)”の感想です。
主人公のレミーはネズミ、原題のratatouilleはドブネズミなどを意味さす"rat"とかけている
余談ですがミッキー・マウスのmouseはハツカネズミなどの家ネズミを指し
猫が追うのがmouse, 犬が追うのはratといわれているそうです。
さらに予断を付け加えるとトムとジェリーのジェリーはジェリー・マウスでありますが、ハツカネズミに間違われるシーンなども見受けられ、英語のいい加減さを感じました。
アメリカン・ドリームなその内容はまさにディズニー映画
話を元に戻して、ディズニーによるピクサー買収後に生み出された本作は
本来ratでありレストランでは忌み嫌われる存在であるレミーが
「誰もが名シェフ」という言葉を胸に自らのレストランを持つにいたるという
まさにアメリカン・ドリームな内容となっています。
それは正に「夢はいつか叶う」とシンデレラが歌ったように
ディズニー映画すべてに通じる道徳的なストーリーであると感じました。
”シェフ=料理が一番上手な人”ではない
で、このように教育的内容であるにもかかわらず大人が見ても興味深い内容があります。
リングイニという青年と二人三脚で批評家をうならせる料理を次々生み出すレミーは
ひょんなことから最も信頼のおける仕事仲間を失います。
その後のレミーの行動がすばらしい。
リングイニという最高のパートナーを失ったレミーはネズミのファミリーの協力を得て
魚・焼き物・グリル・ソースとチームに分け料理を始めます。
それこそがシェフとしてあるべき姿です。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演で「幸せのレシピ(原題:NO RESERVATION)」という
高級フレンチのキッチンが舞台である映画があります。
この映画でシェフとはどのような役割かを垣間見ることができます。
すなわち、シェフはホールにいるゲストの食事の進み具合を把握し、各担当の進捗状況を監督する役職のことです。
参考URL:ブリゲード・ド・キュイジーヌ - Wikipedia
つまり、厳密にはリングイニはレミーの力で皆が唸る料理を作りましたが自らの手を動かしただけに過ぎず
リングイニを失ってレミーはいよいよシェフとなることができたのです。
”誰もが名シェフ”の本当の意味
レミーを突き動かし続ける「誰もが名シェフ」というグストーの教え
それは、夢を持ち続けて諦めなければ誰もが望んだ夢は叶うということでしょうか。
確かにディズニーには一貫してそのような哲学が存在します。
(度々批判の的になってもいますが)
しかし批評家のイーゴが、レミーの料理に感服し、彼の存在を知らされた後に書いた記事の内容に
”誰もが名シェフ”の本当の意味が隠されていると思います。
つまり、誰でもが望めば名シェフになれるという意味ではなく
(事実リングイニもなれなかったし、グストーの店のキュイジニエ達もなれなかった)
名シェフはどこから誕生してもおかしくはないという意味である。
さらに言えば、これは料理や作品を批評する立場の人達へのメッセージであります。
”批評家がリスクを冒す時”
批評家の仕事は総じて楽だ。リスクも少なく、立場は常に有利だ、作家と作品を批評するのだから。
そして辛口の批評は我々にも読者にも愉快だ。
(中略)
だが我々がリスクを冒す時がある。
新しいものを発見し擁護する時だ。
世間は新しい才能に冷淡であるため、新人には支持者が必要だ。
全くもってその通りであるし、今現在、自分も作品の感想なり評価を公開している。
その時につい批判的になってしまう部分もあるし、思い入れが強すぎて自分の好みでないことに癇癪を起こしてしまうかもしれない。
(このような感情を描いたホラー映画”ミザリー(原題:MISERY)”もオススメです。)
今までの常識からは考えられないドブネズミがキッチンでシェフをしているという事実を受け止め
リスクを冒してレミーという新しい才能に寄り添おうとするイーゴの姿勢に胸打たれました。
子供だけでなく大人にも道徳的な作品でただのアメリカン・ドリームで収まらない本作
何度でも繰り返して鑑賞したい映画となりました。